今日の一首
吾子の手の幅より指の長さより厚みの増すに年月を知る
気負いなく「またね」と言えるひとと日々との狭間にて思う危うさ
「生きるために生きる」日々の味気なさ 「死なぬため死なぬ」ことの虚しさ
得るという気構えもなく得たはずの得ざりきものを追う 晩夏なるか
前になし足下になし後になし進むべき道もどりたき道
病にて眠る子の頬見つめ居りただ見つめ居り見つめ居りけり
傷みつつあるこの器 満腹も空腹もなく倦むこともなく
這いあがる冷気の重さ安らかさ鎮魂の歌の厳粛に似て
進まざる 手すらつかざる 運ばざる 吾逃げてをりただ逃げてをり
我が膝に眠る吾子なり目覚めても笑みを確かめ眠る吾子なり
肉なりきすべては肉の産なりき想う憧る惜しむ愛する
薄衣を透かし眺むる肌の如朧に覚ゆ哄笑の声
大海の何処へ連なるかも知らず泳ぎ疲れてただ沈みゆく