かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

GUTSは濃い(ティガ大好き話シリーズ)

ウルトラマンティガ』で、ダイゴ以外に好きなキャラクターを挙げろといわれたら?
 ……いやはや。自分で勝手に問題を提起しておきながら、困り果てる話だなこれは。
 レギュラー・準レギュラー陣はだいたい好きだ。
 イルマ隊長、ムナカタリーダーを初め、シンジョウ・ホリイ・ヤナセ各隊員はもちろんのこと、サワイ総監もナハラ参謀もヨシオカ長官も好きだ(第34話『南の涯てまで』の「アイ・アイ、キャプテン!」にはマジやられたぜw)。ヤオ博士だってマユミちゃんだって好きだ。ヤズミ隊員だけは台詞が棒なのでちょっと苦手だが、それでも第28話『うたかたの…』では、それを逆用した青さが活きたと思う。
 いやいや隊員系でなくても好きなひとはいくらでもいる。ジャーナリストのオノダは、特に初回登場時のキャラがものすごく気に入っているし、おばあちゃん(シンジョウ隊員に言わせれば「ご婦人」。第17話『赤と青の戦い』)も印象に残っている。それどころか敵対するものとしての怪獣……に相当する、オビコのラーメン屋姿(赤星! 昇一郎!! 第27話『オビコを見た!』)も大好きだ。もう全話に印象的なひとがいるから困る。

 そんな中でも、さすがにGUTS隊員は別格ではあるわけで。
 イルマ隊長の忠犬のごときムナカタリーダーはもちろん、ウルトラ系ヒロインの王道を突っ走るレナ、脚本家によって扱いがずいぶん違ってくるシンジョウ(たとえば『南の涯てまで』[脚本:小中千昭]では短い通信から隊長の真意を読み取る切れ者の側面を見せるが、第32話『ゼルダポイントの攻防』[脚本:太田 愛]では直情型の脳みそ筋肉オトコ扱いだったりする)、久々の正統派科学者隊員ホリイもいい。
 それぞれが主役になるエピソードも味わい深い。
 ムナカタリーダーの見せ場は第2話『石の神話』(踏み潰されりゃあ同じだろうに、それでもレナを“身を挺して”護ろうとする男気!)、第5話『怪獣が出てきた日』、『赤と青の戦い』での労務者風、第33話『吸血都市』でのオノダとの男臭いやりとり辺りか。
 レナは第7話『地球へ降りてきた男』第8話『ハロウィンの夜に』第12話『深海からのSOS』(水着な!)第35話『眠りの乙女』に加え、第19~20話『GUTSよ宙へ!』第50話『もっと高く! ~Take Me Higher~』ではエースパイロットの面目躍如という活躍も見せる。もちろん第25話『悪魔の審判』第39話『拝啓ウルトラマン様』第42話『少女が消えた街』ではヒロイン然とした姿も見せてくれて、もう端から端まで魅力の塊。
 シンジョウはフルネームでシンジョウ・テツオ、これがウルトラの正味の生みの親・金城哲夫にかけたものであることは明白で(劇中、金城の出身地である沖縄の方言をしばしば放ちもする)、プリプロの段階では相当スタッフの思い入れがあったポジションだろうことが思われる。
 それを反映して初期には印象的な場面も多い。第4話『サ・ヨ・ナ・ラ 地球』では、無敵の怪獣リガトロンの思いがけない弱点を見抜き、大逆転を導くのがシンジョウだ。この回でのシンジョウの絶叫、「もう一度、人間として生きるんだ!」は、『ウルトラマン』第23話『故郷は地球』で、イデがジャミラに向かって叫んだ「ジャミラてめえ、人間らしい心はもうなくなっちまったのかよお!」に対応していて味わい深い。
 その他、第10話『閉ざされた遊園地』第13話『人間採集』第29話『青い夜の記憶』第41話『宇宙からの友』では主役。『オビコを見た!』での三枚目役はおいしかったし、『人間採集』で甥にヘマをなじられ「いやぁ面目なし……」と短く詫びるのもよかった。
 で。
 意外に活躍が多いのは、科学技術担当・ホリイ隊員だったりする。

『石の神話』では、早くも技術担当としてカシムラ・レイコ博士とやりあい、第6話『セカンド・コンタクト』第11話『闇へのレクイエム』はもう完全に主役。『GUTSよ宙へ』(後編)では、ヤオ博士といかにも科学者っぽいやりとりをして場面を盛り上げた。その後、第22話『霧が来る』第31話『襲われたGUTS基地』でも主役を張り、第47話『闇にさようなら』では他キャラを押し退けて結婚までしてしまった。
ウルトラマンダイナ』のサービス編、『滅びの微笑』前後編(第35・36話)では家族そろっての大活躍を見せ、第42話『うたかたの空夢』でのトボけた味も悪くない。
 あるいは、シリーズ中に一番“化けた”キャラクターかもしれない。

 日本のSF系物語には伝統的に「ハカセ」が登場する。
 最も有名なのは、『ゴジラ』の山根博士ではなかろうか。『ウルトラQ』では一の谷博士、『ウルトラマン』ではイデと岩本博士と、円谷系でも博士は大活躍だ。
 これは思うに、サイエンスフィクションとしてのSFには、必然的に非日常的な科学的設定(あくまでも“的”ね)が多用され、それを視聴者に伝えるためには映像によるト書きがあるべき、という考え方に基づくのだろう。
 この考え方が必ずしも正解ではないことは後日、個人的な印象では『スターウォーズ』『エイリアン』で軽々と証明されるのだが(なんの説明もなく登場する異形の異星人とか、宇宙“貨物”船とか最高かよww)、草創期には必要だったのかもしれない。
 どうあれ、ウルトラにも博士が求められ、配置された。
 それが一の谷博士であり岩本博士だったわけだが、彼らと隊員の中間地点にイデが置かれた、これがデカかったのだと思う。
 イデは視聴者のこどもたちにとって、ドラマとの最も密接な接点となった。なんとなればムラマツキャップはおとうさんみたいだし、フジ隊員はおねえさん、ハヤタは憧れのヒーロー、アラシはガキ大将のでっかいやつで、みんなちょっと距離がある。
 イデは、体力がない子でもアタマがよければ科特隊員になれるかもしれないという夢を抱かせてくれたし、なにより優しくておもしろかった。イデ役の二瓶正也は、ハヤタの黒部 進(念のため添えるがレナ隊員=吉本多香美の父君)をさしおいて、ウルトラとなんの関係もないイベント会場で客席のこどもから「うるとらまんのおじちゃーん!」と声援を受けるほどの人気者になったのだ。
 ところが、そのインパクトが強すぎたか、以後のウルトラには正統派の科学者隊員がいなかった。『ウルトラセブン』ではアマギ隊員がそのポジションだったのだろうが、ドラマ自体の重厚さがひとりの天才科学者をむしろ否定していた部分もあり(地球防衛軍はつまり“組織”だったのである)、活躍の場面があまりなかった。
 その後ウルトラは科学とか計画とかをどんどん大雑把にしていったため、科学者隊員の出番はほぼなくなった。
 そこへ登場したのが、GUTSホリイだったというわけだ。

 ホリイはまさにイデの直系といえる。
 ドラマで笑いをとる役目を担っているし、科学についてはオーソリティという立場。しばしば“科学者とは”的な建前論を展開する辺りがいささかならずウソっぽくもあるが、発明家というスタンスはモンスターキャッチャーの制作などで保たれた。この辺には、システマイズされたセブンの地球防衛軍/ウルトラ警備隊と異なり、もともとTPC(地球平和連合)の万能セクションだったGUTS(グローバル・アンリミテッド・タスク・スクワッド)という設定が活きているといえる。
 また、イデが時にその立ち位置(責任者ではなく、ヒーローでもヒロインでもなく、律儀な隊員でもない、主流から外れたハミダシ者)ゆえにドラマの核心に触れる台詞を預かっていたように――『故郷は地球』でのジャミラへの呼びかけはもちろん、『ウルトラマン』第37話『小さな英雄』での懊悩など忘れようにも忘れられない――、ホリイもダイレクトにコンセプトを言い放つ。『霧が来る』での「……人間……ナメ、たら……あかんでえ!!」は、最終回にも繋がる強烈な一撃だった。

 その後、ダイナでは同じポジションにナカジマ・ツトム隊員が就くが、もうひとつ小物の感がありホリイほどの存在感はない。これは演じた小野寺 丈の力量の問題ではなく、ダイナというシリーズ自体がそういう方向へシフトしたから、というのが正しいだろう。ネオフロンティア時代、科学は再び組織のものになり、個人の役割は減じてしまったのだ。
 ガイアでは外部にアルケミースターズがいる上、なんと科学者系が主人公=ヒーローになってしまったものだから、ハミダシ者としての科学オタクの出番はない。コスモスではドイガキ隊員がそのポジションだが、所属するTEAM EYESがそもそもSRC=サイエンティフィック・リサーチ・サークル、科学調査会の一組織で、ここでもやはり科学は組織のものになっている。その風貌(演じた須藤公一のという意味ではなく、役柄として設定されたものということ)からも、科学よりコメディ係という色が強く、イデ-ホリイの線上にはそもそも置かれていない。マックスのショーンはイデ-ホリイ線を意識したことが明らかだが(ドライバー一本で戦闘機を修理してしまう辺りとか)、そもそもマックスには骨格がないのでコンセプトを代弁するような場面がなかった。
 してみるに、ウルトラシリーズにおける成功したハミダシ科学者は、イデとホリイのふたりだけ、ということになりそうだ。
 どちらも“シリーズ第一作め”というのは、偶然ではないような気もする。
 つまり、ドラマ内の状況が模索の段階にある、というのが、ハミダシ科学者存在の必要条件になるのかもしれない……というような。

 まあとにかく、ティガの登場キャラは魅力的ですよ、わけてもホリイはイケてます、というお話。
 本当はもっと理路整然と書きたかったんだが、なんか最近そういう集中力がないんだよねえ。花粉症のせいではあるだろうし、今はたまさか腰を傷めていてツラいというのもあるし、さらに一年ぶりに耳の裏に腫瘍(良性)ができてこれが痛いというのもあり……まあ一番大きいのは加齢による劣化ですかなあわっはっは(笑い事じゃない)。