かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

2016年11月13日の明け方にみた夢

 ものほんの夢である。寝てみるやつ。
 あんまりにも印象的だったので、目覚めてすぐに文章にまとめていた。
 たまさか昔の記録の類を掘り返していて発見、こいつはおもしろいと思ってここに掲載することにした。
 キャラクターがまるごと借り物なのだが、そこは勘弁。

 夢ってなんなのだろうね。
 覚醒中の記憶の整理過程が垣間見えるものともいうが、それだけだったらこんな夢をみることはないだろうし、願望の具体化というのもこの夢には適用されない気がする。
 とにかくこれは、ドラマを観ているような夢だったようだ。
 俺の中で適当に編まれた物語が漏れた? まあそういうのが一番ふさわしいのだろうが、それにしてもこの夢をみている最中はわくわくしていた気がする。次はどうなるのだ、と。自分で編むことがそうはならないことはよく知っている。ヒネって戻してまたヨジり、句読点のひとつずつにまで魂込めて死にそうになりながら編む。わくわくするのは最初と、つくりあげてから数年も経ってからのことだ。

 どうあれ、こういう夢をわりとふつうにみてしまうので、わざわざ日々テレビドラマを追う必要を感じなかったりはする。便利だ。
 以下、当の記録のそのまんま。

――――――
 主人公はなぜか山岡士郎だw パートナーはもちろん山岡ゆう子。

 アメリカで新興宗教が勃興し、多くの信者を集め始める。教祖は経済界の超大立者で、個人資産が何十兆ドルとも言われる人物。山岡らは日本国内の知人の懇願を受け、その調査を引き受けることになる。
 その知人は、アメリカに住む親族がその信者になってしまったといい、教団の調査から、可能ならその親族の改宗・脱退、日本へ連れ戻すことまでを山岡らに頼む。
 山岡らは取材というかたちで宗教団体にアプローチ、喧嘩腰で「返せ」と怒鳴り込むが、意外にも団体の対応は柔軟。信者当人どころか、教祖にまで自由に会える。

 教祖の曰く、世の中には富を得るに相応しい人間と相応しくない人間があり、自分はどちらかといえば相応しくない側だった。だが富はそういう者へ集まりがちで、それがさまざまなバランスを狂わせている。これは再配分の必要がある――と、そう考えたという。
 それで人品を測りつつ再配分に値するひとびとにアプローチし、そのひとびとにさらに多くのひとびとへアプローチしてもらい……ということをしていたら、かなりの人数になってきた。そのうち、これは宗教法人化するのがよいと思い至る。宗教法人化すれば税制の上でも世間の注目を利用する上でも有利だ、と。(※アメリカで実際にどうなのかは知りませんw)
 いわば新興宗教は体のよい隠れ蓑に過ぎない。別にこれは報道してもらってもかまわない。どうせ信じない者は信じない。いやむしろ教義の「富の集中の否定と個の資質に基づく再配分」は報道してもらいたいぐらいだ。信じない者は信じないし、そういう者は再配分を受ける資格のない者だ。
 どの道、自分はもう長くない。これはオフレコーディングで聞いてほしいが(きみたちは信用できると感じたから話そう)(わたしがなぜこれだけ成り上がれたかと思うかね? それは相手の正体を見抜く力をもっていたからだよ)、すでに不治の病で余命宣告を受けている。どうあがいてもあと半年。わたしが没したら、同時に再配分計画が始動する準備ができている。“教徒”たちにわたしの財が、一セントも残さず、その“徳”に見合うバランスで配分されるのだ。わたしの法的相続者? いないさ。だからわたしは、富を得るに相応しくない人物なんだよ(高笑い)

 山岡らは結局手ぶらで帰朝し、これといった報道をするでもない。もちろん富井、谷村、大原社主らに事情は説明する。上のふたりは話を理解するが富井だけは山岡らを出張手当ドロボーと罵る。さすが東西新聞社、ブレないw
 話の発端になった知人にも報告し、だからあと一年待てと言う。
 そして一年後、当の親族が戻ったとの報告を山岡は受け、ほぼ同時に山岡とゆう子の銀行口座には手取り額にして三億円ずつが振り込まれている。税その他への対策も万全で、三億円がなんの問題もなく受け取れるように計算された額になっていた。
 さらに半年後、興味をもって一連を追っていた山岡が険しい顔をしているのにゆう子が気づき、わけを質す。すると山岡が言うには、故・大富豪から富の再配分を受けたひとびとは多くがすでにすっからかんだという。なぜか。大きな遺産を得たことを警戒心もなく近しい人々に話し、結果それらにタカられまくり財を失ったのだ、と。
 話の発端になった知人からして、親族一同で“相続者”にタカり、その配分で一族全員が絡む骨肉相食む一大修羅場を演じている最中だという。中心にされている“相続者”は為す術をもたず、一族は崩壊の危機にあるとか。
「あの爺さんの言った通りなのかもしれない。最終的に富は、得る資格のない者に渡る……一度再配分したぐらいでは、そういう歪みは正されないんだろう。あるいはそれは、人間が先天的に備えていて、解消のしようがない歪みなのかもしれない」
 それを受けて、ゆう子がつぶやく。
「……そこまで見越しての、最後のイタズラだったのかもしれないわね。だって……自分で言っていたじゃない。わたしは相応しくない者だ、って」

 下げまでまとまっていてキャラクターもよく活きた、実におもしろい夢だった。