かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#2124

 感情にも速度がある。最速は怒りで、遅いのは悲しみだ。だがこれが不思議なもので、その感情の大きさと速度は反比例する。つまり、ものすごい怒りに襲われた時それは遅れて認識され、少し間をおいてから――時には何日もの時間が経ってから怒りというかたちになり、どうしようもない悲しみは瞬時に心を捕らえ慟哭として迸るのだ。

#2123

 誇りをもつってのは、自分の中に自分で柱を立てるってことだ。自分の外に誰かが準備した柱に寄り掛かって立つことじゃあない。だいたいが誇りなんてものは無くたって生きるのに不自由しないもんだし、それにすがらなけりゃあ生きられないのはむしろ苦境に陥ってる証拠だ。そんなもんをつくることに力を割くより、それに頼らずとも生きられることのために力を使う方がずっといい。

#2122

 愚痴は垂れられるうちにいくらでも垂れておくといい。わずかでも知恵がついてしまったら、そのあとは愚痴を垂れるたびに自身のみじめを思い知ってつらさが増すばかりになるからな。誰かを嗤ったり見下したりして自分の座標を求めるのと同じ類の、知恵がついたら金輪際採れない行動だ。やれるうちにやっておけ。

#2121

 理屈を軽視してはいけない。単に誰かの賛意を得るだけなら感情的なはたらきかけの方が効果的だが、のちのちまで有効な納得を得るためには理屈が必要だ。もちろんその誰かの中には自分自身も入っている。

#2120

 たいがいのことは隙を突けばなんとかなる。というより、隙を狙わないとほとんどのことがうまくゆかない。じゃあ世の中はそれほど抜け目なくできているのかというと、そうではないから隙を窺えるのだ。その辺りの要領を得ることを成長という。

#2119

 今日は特別サービスで知恵者になる方法を教えよう。簡単だよ。知らないことには口を出さない、たったそれだけだ。そうすれば内実ともの知恵者になれる。なに? それではなにもしゃべれない? おおいに結構、それがわかっているだけでじゅうぶん知恵者だ。よくしゃべる知恵者になりたいって? 無理。たかが人間がそんなものになれるわけがないだろう。よくしゃべる連中はみんな知恵者じゃないのさ。本当だぜ。