かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

#293

危険なものと敢えて交渉をもつ必要はない。その交渉で得られるものを対象の危険さと比較して、利得があると考えた場合のみつきあうといい。もっとも世の中には、危険であること自体が利得だと考えるような変わり種も少なくないらしい。俺はもう、そういうの…

#292

攻撃は最大の防禦とは、小心者の算段。昔から名将は、戦う前の講和こそ最上と心得ている。講和には相手に頭を下げることが必ず含まれてくるわけで、それをする勇気のない者が戦に走ることになる。

#291

人はどの道、自分の見たいようにしか世界を見ないし、それ以外に見えるものもないのだから、自分の世界の狭さを嘆くことにさほどの意味はない。もし自分の世界を広げたければ、自分の見たいものの変更から始めることだ。

#290

知識はあくまでも素材、それも賞味期限がごく短い素材であって、それをどう選択し料理するかが、いわゆる知識人のすべき作業であるはずだ。腐りかけた知識をそのまま並べてドヤ顔をしているようでは、スマホを握った厨房に遥かに劣る。

#289

雄弁は銀、沈黙は金なんてのは、雄弁な者が面倒を避けるために言い出したことに違いない。同様に、一番に祭り上げられるものの多くは邪魔だから褒め殺されているだけのものだ。子曰く、鬼神を敬してこれを遠ざく、知と謂うべし……ってやつだな。

#288

No catch, no release.

#287

命はハードウェアに分類すべきものだと思う。それに付随するソフトウェアは精神で、オペレーターに相当するのがおそらく“魂”とかいわれるものなのだろう。

#286

無理して生きる必要は特にないが、積極的に死ぬ必要はさらにない。とりあえず生きておけば、だいたいどうにかなるもんだ。

#285

こどもを「だからこどもは」と軽んじる者たちや、「こどもは気楽でいいな」と羨む者たちは一体、自分がこどもだった頃のことをちゃんと記憶しているのだろうか。こども時代にはこどもなりの悩みも迷いも、もちろん闘いだってあったのだ。それともそういう者…

#284

温故知新は至言だが、半世紀前には影もかたちも存在しなかったものが幅をきかせる時代には少々分が悪い。

#283

正しい指摘をする者は大概周囲から煙たがられるが、それはその者が正しい指摘をすることに因るのではなく、それが正しい指摘であることに気づいていないか、その正しさを周囲がすでに知っていることに気づいていないことに因る。

#282

音楽の構造は、実はそれほど複雑なものではない。けれど、音楽から生じるひとの感情は、しばしば複雑なものになる。同様にひとは、さまざまな単純なものから幾多の複雑なものを生み出す。どんなものを生み出せるか、それを個性という。ただそれは、生み出す…

#281

別に頑張って自己表現を志さなくとも、日常のすべてに自己は顕れてしまっている。むしろ隠そうとすることの方が難しいくらいに、自己は情けないほど漏れ出てしまっている。それに気づいていないのは本人だけだ。

#280

言行にブレがあるとかないとか、低次元の話題はもうやめにしたいな。複数の事例についてひとつの則に従い追求してゆくと、個々の結論が一見は違ったアティテュードに至ることがある。それはけれど、矛盾でもないしブレたわけでもない。単に周囲が、追求者の…

#279

愚かであることが幸福であるように、恥知らずであることもまた幸福なことだ。自身の罪科を理解できず、また理解したとしてもそれを恥じずにいられるなら、これほど安穏なことはない。たとえその結果周囲から軽んじられ蔑まれたとしても、どの道その者はそれ…

#278

憧れが色褪せるのは、憧れの対象のせいではない。自分が変わるせいだ。だから憧れる者は、憧れること自体にもその褪色にも責任をもつべきだ。

#277

記憶は常に変化し続けている。時にそれは事実よりも美しくなり、また時には嫌悪すべきものにもなる。これは幸福なことと言わねばならない。もし記憶が完全に固定され、一切の変化を来さないものになったとしたら、ほんの十数年で人の数は激減し、その文化は…

#276

多くの人は自分でそれを選択したつもりでいるが、それはほとんどの場合、偶然がその人に与えたものに過ぎない。つまり世界には、成果ではなく結果だけがあるということだ。とはいえそれは、決して悪いことではない。むしろ自身の成果だと信じることの方が、…

#275

世の中に不要なものはない。もしそれが不要なものなら、そもそも最初から存在していないはずだ。今そこに在る以上、それは必要なものなのだ。

#274

バレなければ大概のことは赦される。ただ、まず欺かなければならない相手をどう欺くかが難しい。つまり自分の目、自分の倫理観だ。

#273

世間から立派だと賞される男になればなるほど、父親としては無能な男になる。それは男という存在が本質的に愚かで頼りないものであり、そして父親とは社会的評価を振り切って子に愛情を注がなければ勤まらない仕事であるからだ。

#272

会話を和やかに楽しく成立させるためには、少なくとも三種の条件が必要だ。ひとつは相手の発言をきちんと聞こうとする態度をもつこと、ひとつは知識の総量に大差がないこと、もうひとつはその会話を成立させようとする意思を互いがもつことだ。どれが欠けて…

#271

乳児期の育児には、通常の性行為に含まれる行為がほぼすべて含まれているようだ。というより、性行為は育児の再現だといってもいい。あるいは人は、自身が乳児であった頃に得たケアを懐かしんで性行為を組み立てたのかもしれない。ただしそれはあくまでも性…

#270

無心というのは、なにも考えていない状態のことじゃない。むしろひとつのことを考えに考え詰めて、他のことがまったくお留守になった状態なんだ。だから、ひとつに絞れない人は無心に縁がない。それはそれで幸福なのかもしれないがね。

#269

誰かになにかを言われて傷つくのは、自分の中に傷の素があるからだ。的があるから矢が当たるわけで、的がなければ的外れにすらならない。傷つけられたと思ったなら、傷つけた相手を恨むのも悪くはないが、それよりも自分の傷の素と自分なりに向き合ってその…

#268

ひとの意表を突くことは簡単だ。少し頭のいい者なら、誰にでもできる。だがひとに感じさせることは難しい。その急所がどこにあるのかは、未だわからない。

#267

タイムマシンやどこでもドアを欲しがるうちは、まだ自分ってものを理解しちゃいないね。本当は、どこへ戻ってもどこへ進んでも、どんな場所へ行っても、なにひとつ変わることはないんだ。そこにいるのが自分である以上、今ここにいるのと同じだってことさ。

#266

現実を知って夢を失うようでは、まだまだ思い入れってやつが足らない。現実に失望しつつなお夢を追えれば、そこそこだ。現実を知って現実を愛でることができ、さらに夢は夢で愛でられるようになったら、もう怖いものはないね。

#265

自分が欲しいものを、他の皆が欲しがるとは限らない。だから、自分が欲しいものを周囲に与えることは、必ずしも善行にはならない。こんな当たり前のことが、なぜわからないんだ?

#264

誰もが老いるが、誰もが衰えるとは限らない。けれどどの道、誰もが了わる。