たいがいのトラブルは、生じたこと自体よりそれに始まる連鎖とその規模でトラブルと認識される。ひとの死も、それ自体はほとんどトラブルにならない。そのひとを愛する、あるいは必要とする数多のひとびとが受ける形而上下を問わないダメージを初め、死に付…

他のどんな道具も使い方を心得た人間が扱わない限りその役目を果たさないものだが、唯一武器のみは使い方を心得ようが心得まいが人間が手にしただけで武器になる。それどころか武器以外の物まで武器にしてしまうのが人間のすごいところだ。然り、武器とは道…

強い者はやさしくなれない、強さから生じるのは憐憫だけだ。弱い者が周囲から施しを受けつつ永らえ、やがて施されたことごとへの感謝が充分に熟した時に堪えきれず滴り落ちるもの、それがやさしさというものだ。

過去の思い出と未来への希望、どちらかを奪われるとしたらどちらを選ぶ？

酒を飲まずに過ごす人生と酒を飲めずに過ごす人生は酒と無縁という点では同じだが意味合いがまるで違う。同様にひとを愛さずに過ごす人生とひとを愛せずに過ごす人生も意味合いが違う。どうあれ酒を適度に飲みひとを深く愛して生きるに越したことはない。

自分へのご褒美を準備しなきゃならない環境にいるのは効率があまりよくない。自分へのご褒美を準備しなくとも、必要な時に誰かがご褒美をくれる環境を準備するのがベストだ。それが簡単じゃないことはよくわかるが、だからこそそれはご褒美たり得る。

暇を持て余したり潰さずにいられなかったりというのは暇に慣れていないからの話で、慣れてくると肩や腰の辺りに暇を常時たからせておいて順番に撫でたりじゃらしたりして遊べるようになるよ。暇ってけっこうかわいいぞ。

創作物と向き合うのに必要なのは、己の分際を知ることと作品の性格の把握、そしてその上でその作品に対したいと思う欲だ。

腹が減ったから食うってのとムカついたから殴るってのを同列に扱うやつとのご相伴は力いっぱい遠慮しとく。

頭の悪さは誇れるもんじゃないが、恥じるもんでもない。頭の良さも同様だ。要するに頭の良し悪し自体は大した話でもない、重要なのはそれを活かすことができているかどうかだ。そうだよ、頭の悪さだって充分に活かせる才能のひとつなんだ。

たのしく生きるなといっているんじゃない。ほどを知って生きろといっているんだ。

研ぎ澄まされた人間の感覚は研ぎあげたばかりの刃物と同様に危険な代物だから、よほどの使い手でない限りはあまり研がないか適当に使い潰していい具合に鈍らせておくことが平穏な日常を送るために大切な業務だ。

愛情も憎悪も自身が内包する力を増幅して外部へ行使する動機になり得るという点では同様だが、その結実が自身のみへの報酬になるか他者への報酬にもなり得るかという点でまったく異なる。つまりコストパフォーマンスに差がでるわけで、エネルギーの有効活用…

大概のものは思いついたひとが実行した場合がいちばんそれらしく仕上がる。模倣者のものは最初に思いついたひとが望んだものとは必ず異なる仕上がりになるものだ。もし模倣者の方が高い評価が得られたとしたら、それは模倣者が加えた要素が評価されているの…

そんなに無駄を省きたいなら、まず君自身が退場してみたらどうかね？

別に幸福に定量があるわけじゃあないんだから、誰がどれだけ幸福になろうとキミも幸福になれるんだよ。あとはキミがそれを幸福と認められるかどうかだ。

罪人を憐れむ徳があるなら、まず隣人の困窮へ施しをおこなえ。

誰かを呪う者は、呪う意志をもった時点ですでに呪った報いを受けている。つまり呪う意志自体がもう報いなのであって、そこから抜け出す道は呪った時にはとっくに塞がれている。だから呪う者にかけるべきことばはないし、かける情けもまた無為なのだ。

成長を見極められるのは格下相手の時だけだ。格上はもはやどこまでいっちゃってるのか、それは昨日と比べてどうなのか、皆目検討がつかないからこそ格上なんだからな。

こだわる人間とこだわらない人間、どちらがつきあい易いかといったら当然後者だが、どちらが好きかと問われれば当然前者だ。然り、ひとの好き嫌いと居心地は必ずしも一致しない。あとは自分がどちらを優先するかの問題だ。

弱るってのは、具合が悪くなるんじゃなく具合がわからなくなることなんだ。

もちろんわかろうとする努力は重要なんだが、それが結果をともなう必要はないってことを理解することもまた同じくらいに重要なことだよ。

素晴らしいものを見つけたら、見つけることができた自分をちょっと誇っていいぞ。そしてその誇りにかけて、見つけた素晴らしいものを支えるといい。

掃除の本質は『除くこと』なんだよ。なにを除くかについては大別して二種がある。ひとつはひとの存在の痕跡を除くこと、もうひとつはひと以外の存在の痕跡を除くことだ。前者は日常にひとが存在する場所での掃除、後者はひとが存在しない場所での掃除。埃を…

なんのための命かなんてのは、自分で決めることじゃあない。ましてやほかの誰かが決めるもんでもない。たかが人間がそんなことを計ろうってのは、僣越ってもんだぜ。

だから重要なことばかり考えていないで、くだらないことで一喜一憂しなよ。その方が世界は確実に平和になるに違いないんだから。

うっかりやらかしちゃうのが油断なんだよ。油断を気にしている間は、油断なんかしない。だから油断は諫めても諫めてもなくなりゃしないんだ、人間ならね。

疑い深い者には疑わせておけ。どうせ消極的事実の証明に関する話を知らない程度の人間なんだから。