かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

2013-01-01から1年間の記事一覧

リクエストほしいの。

大晦日だねえ。 今年の大晦日は、いろんな意味で寂しい。 去年の大晦日から日付が変わる頃までには、あんなことしてたなあこんなことしてたなあと思うとね。さすがにね。 でも、こっちがどういう状態であろうとなにを考えていようと、旧年は暮れちゃうんだし…

【パニッシャー】(後編)

(承前) 決行は早い方がいい。アイツのことばに従ってボクは、その日のうちに片をつけることにした。アイツは軽くオッケーと言った。 ともあれ、まだ明るいうちから物騒なことをする気にはなれない。 アイツと会ってたのは夕方ぐらいだったから、ボクはその…

【パニッシャー】(中編)

(承前)「でも、さ」 店を出て、何となくその辺を歩きながらボクは、アイツにまた話しかけた。 「ん?」 「やっぱ自分がヘンなんじゃないか、って思うことがあるんだよ」 「何だ。さっきの話の続きか?」 「うん。だってさ、ホントにどうでもいいことなんだ…

【パニッシャー】(前編)

『!』 アレを見てボクは、思わず漏れそうになった声を、あわてて呑み込んだ。 あの野郎、ふざけやがって……! ボクは、アタマにくくくーっと血がのぼってくのを実感した。景色がちょっと揺れる。あんまりアタマに血が集中し過ぎて、血圧があがったからかもし…

ネタバレ的あとがきと次回予告

はい、おつかれさまでした。 以上にて、リンゴーさんのお話は終了。気がつきゃなんと7週間にも渡ってリンゴーが続いていたことになる。こっちはできあがってる分を順次アップするだけだったが(といっても毎日アップ分には目を通して、何箇所かは修正してい…

【Ringo the Wight/#4-15】

(承前) ――行っちゃうの? ――ああ。そういう約束をしちゃったからね。明日が期限なんだ。 ――そっか。そうなのか。……あのさ、俺さ、頑張るよ。この街、なんとかしようと思うんだ。みんなを、どうにかしたい。今のままじゃ、みんなつらいもんな。 ――それがい…

【Ringo the Wight/#4-14】

(承前)「……いろいろ気になってたみたいだね。種明かしをするよ。終わったからね」 俯いたまま、リンゴーがゆっくりと言った。 「俺はね、つまり……売ったんだ。自分をね。もう薄々気づいているだろうけど、俺はこの体のおかげで、幾つかの機関に追われてい…

【Ringo the Wight/#4-13】

(承前)「さて……」 小屋に戻り、イダは呟いた。まだ警報は鳴り続けている。狩り出しが実際におこなわれているなら、この辺りにもやがてその手が伸びてくるだろう。どうする。まずは“下”に戻って態勢を立て直すか。それとも……。 (とにかくここから遠ざかる…

【Ringo the Wight/#4-12】

(承前)「痛ぅ……」 ゆっくりと体を起こして、イダは背中をさすった。 「あの野郎、全体重を乗せて背中をひっぱたきやがったのだな。さすがに効いた……」 呟きながら立ち上がり、軽く上体を回す。腰にかなりの無理がきているようだ。 だが、ここであきらめる…

【Ringo the Wight/#4-11】

(承前) 警報の音、だった。 ビルの中のあちこちはもちろん、街角にも据えられているスピーカーから飛び出す、緊急警報の音だ。 いったいなにがあったというのだろう。この警報が鳴らされるのは、よほどの大事件が起きた時か、あるいは大きな天災が予測され…

【Ringo the Wight/#4-10】

(承前)「ここだよ。ここを登りゃあ、外だ」 後ろ手に縛られ、腰に銃を突きつけられたままのヤクザが、吐き棄てるように言った。 「なぁるほど。階段ばっかり探してたが、こういうのもあって当然だったなあ。ちょっと迂闊だったかもしれない」 ヤクザの後ろ…

【Ringo the Wight/#4-09】

(承前) リンゴーの言葉にリクは素早く身を伏せ、足場から響いてくる音を確かめた。 「本当だ。もう、すぐそこまで来てるみたいだ」 ヴィレンがさっと立ち上がり、周囲を見回す。 「ここはT字路です。うまく利用できそうですね」 リンゴーは頷き、ヴィレン…

【Ringo the Wight/#4-08】

(承前) あれから十分ほどが過ぎたが、リンゴーたちの周囲にはまったく動きがなかった。 「どうやら……」 座り込んだまま、リンゴーが呟く。 「正義の味方も悪漢も、俺たちを探しあぐねているらしい。歩き回り過ぎたかもしれない」 リクとヴィレンも、足場の…

【Ringo the Wight/#4-07】

(承前)「わあ……」 リクは無防備に声を出してしまってから、その反響が意外に大きく膨らんで跳ね回ることに気づき、両手で口を塞いだ。 「なるほどね」 リンゴーが呟いた。 「これじゃあ一フロア分を昇るのにも時間がかかるわけだ」 ヴィレンはただ黙って、…

【Ringo the Wight/#4-06】

(承前)「いやはや、まさか」 階段を駆け上がりながら、切れぎれにリンゴーが言う。 「ボスを始末した、なんて濡れ衣をかぶせられるとは、思ってなかったからなあ。奴らの逆襲の規模ってのを、完っ全に読み間違えた」 もう何段ほど登っただろう。高さにして…

【Ringo the Wight/#4-05】

(承前)「……すげぇ」 リクは呆然と見ていた。 ヴィレンが喧嘩に強いのは知っている。今までに何度も、キレたカモに絡まれるのを見た。ヴィレンはそんな時、たいがい一撃で相手を沈めてきた。けれど、これだけの大人数を相手に立ち回るのを見たのは初めてだ…

【Ringo the Wight/#4-04】

(承前)「……おまえ、正気か? こんなところで私を殺したら、自分がやりましたと触れて回るようなものだぞ。となれば、おまえの言うところの旧態依然とした組は、おまえをとことん追いかけ始末するだろう。それがこの世界の、昔からの掟だからな。そうなった…

【Ringo the Wight/#4-03】

(承前)「まさか……」 部屋に閉じ込められ豪奢な机の前で呆然と立ち尽くしたまま、フジマが呻くように言った。 「まさか本当に、死なない男がいるなんて」 そしてフジマは、ずしん、と椅子に座り込んだ。フジマの服と擦れた椅子の背が、きゅい、と微妙な音で…

【Ringo the Wight/#4-02】

(承前) 眉をしかめた、少し難しい表情だ。口の中でなにかをぶつぶつと言っている……が、すぐにパッと目を見開いた。 「躊躇してる場合じゃないな。セトくん、KT貸してくれないか」 セトが「はい」と答え、ポケットからKTを取り出す。それを見ながらリク…

【Ringo the Wight/#4-01】

(承前) 五人が廊下を走る。 先頭を行くのはリンゴーだ。リンゴーは、ドアの前ごとに立ち止まってはカードキーをスロットに通し、錠を開いて中に飛び込む。リクとヴィレンが、素早く続く。 ここでも五人の役割配分は、特に相談したわけでもないのに、きっち…

【Ringo the Wight/#3-11】

(承前)「多分エイミは、このフロアにいる。片っ端からドアを開けて捜す」 走りながらリンゴーが言う。 巨体を揺らして後を追いながら、クラークが問い返す。 「なぜそう思うんだね?」 「フジマの口ぶりからすると、俺たちが現れたらすぐ全員を始末するつ…

【Ringo the Wight/#3-10】

(承前)「残念だが」 軋み声が言う。 「君はここから出られない。私たちには、これ以上無駄に費やせる時間というものがないのでね。最初はあの女で君たちを釣りあげようと思っていたが、うまいぐあいに君たちの方から勝手に来てくれた。呼びつけ、待つ手間…

【Ringo the Wight/#3-09】

(承前)(ふえぇ……) ビルの中に入り、リクは呆然とした。 広い。まるで駅の構内のようだ。けれど駅とは違って、人影はほとんどない。おまけに綺麗だ。リクたちが普段歩き回っているビルの中とは、全然違う。デザインも凝っているが、とにかく手入れが行き…

【Ringo the Wight/#3-08】

(承前) ものの数分とかからず、五人はビルの入口の目の前にまで迫っていた。 “下”のものとも思えない、立派な入口だ。 道路とは、幅が三十mはありそうな階段で隔てられている。その段の数は、二十もあるだろうか。そしてその向こうには、何枚ものガラスの…

【Ringo the Wight/#3-07】

(承前) 街を歩く者たちの姿は、さまざまだ。ある者はいかにもオフィスワーカー風だし、ある者は作業着姿だったりする。ほとんどはせっせと歩くか、忙しげに何かの作業をしている。 (TTAは本来、どこもこんな風なのかな) リクは妙な気持ちの昂りを感じ…

【Ringo the Wight/#3-06】

(承前) まさかリンゴーは、実はフジマ連合そのものと繋がっているんじゃないのか。 味方のふりをしているだけで、ヴィレンやリクを罠に嵌めようとしているんじゃないのか。 (いや……いや、そんなことは……) ない、はずだ。それはない……でも。 (なぜ) リ…

【Ringo the Wight/#3-05】

(承前) 先を行くのはケイとユーリー、それから半歩あとにリンゴー。他の四人は、さらに数歩あとに続く。ビルの隙間の路地をくねくねと進みながら、前のふたりとリンゴーの間には小声での会話が続いている。 (……俺たちには、聞かせてくれねえのかよ) 追い…

【Ringo the Wight/#3-04】

(承前) 一時間ほど後、七人は、目指すTTAブロックの外れに入っていた。 先導のふたりは、本当に道に詳しかった。極力人目を避けたいというリンゴーの希望通り、裏路地から裏路地へ、時には道とも思えないビルの隙間を通って、ここまでの道のりを完璧に…

【Ringo the Wight/#3-03】

(承前) 細身で小柄、リクよりも齢は少し上なのだろうが、体格は華奢だ。恰好こそ一応は毒虫ながら、どうもひ弱な感じがする。 リクたちにエイミ掠奪を報せにきた、セトだ。 「なんだい、セトくん」 問い掛けるリンゴーに、セトは答えた。 「エイミを助けに…

【Ringo the Wight/#3-02】

(承前) 部屋にいた少年たちが一斉にリンゴーを見た。どの顔も『俺を』と言っている。 それを充分に意識した上で、リンゴーは芝居がかっておおげさな口調で言った。 「なにしろ、敵の当面の本拠地に赴く、ってことになるんだからね。半端な気持ちで当たった…