かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#321

 あらゆる作品はすべて再現芸術の要素を備えている。つまり、受け手が作品と関わりをもつ時、必ず何らかの加工・創作をしているということだ。たとえば小説の場合、すべての視覚的情報は、どんなに細かな描写があったとしても、読者の想像力に委ねられる。その部分に再現芸術の要素があるわけだ。同様に、作品の要素として通常は時間が含まれない絵画なら時間を、細かい描写を役者の演技に預けてことばで伝えない映画や演劇であればその部分を、受け手は常に自分の力で紡ぎ出し作品に付与することで受け手の中での作品を成立させている。これを従来は「解釈」と呼んできたわけだが、実はそれ自体がすでに創作であり、ゆえに作品が駄作であるか名作であるかの別は、共同制作者である受け手の力量によって決定される部分も大きいのである。