かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#138

(運命シリーズ②)
 運命論者はそれ以外の者よりちょっとばかり賢いのかもしれない。自身の力が及ばない対象について、自身の力不足を認めつつ、けれど自身を追い詰めないようにバランスを取っていると考えられるからだ。一方で運命を認めない者は、力が及ばなかった時、結果的にその責任を自分を含むなにかに負わせなければならない。それが自分へ向き過ぎれば自分を追い詰めて自滅する可能性があるし、他者へ向かった場合は無辜の不名誉が発生する。つまり運命論者は、運命という偶像に責任を負わせることによって、起こり得る新たな問題を回避乃至軽微にしているわけだ。これは単に諦めるというのとは違い、及ばなかったことで生じるさまざまな負の念を運命に仮寓させることで解消する、巧妙な手段といえるだろう。ひとがどの道、限界ある存在でしかない以上、そういうかたちでの自衛策はどうしても必要なのだから。