かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#443

 大昔の野球の世界で、外野フェンスの近くでの打球処理が巧みな野手を「壁際の魔術師」と呼ぶことが流行したらしい。それを前提に「××際の魔術師」という言い回しを展開することが少し流行した。「瀬戸際の魔術師」とか「生え際の魔術師」とか。シュールなものほど評価された。仲間うちでもいろいろな際の魔術師が開発されたが、今でも好きなのは「間際の魔術師」だ。いったい何の間際なんだよ、と周囲に問われても「いや間際だから」としか答えなかった開発者の堂々たる態度もよかったが、むしろなんの間際かわからないこと自体がおもしろい。ひたすら無意味に無制限に魔術師が量産できてしまう、ある種の図々しさや無責任さのようなもの。魔術師という語に敬意なり権威なりがあるからこそ成立する、ちょっとした毒。今にして思うと、だいぶ高度な遊びではあった。小学生の仕業としては、評価してよいと思う。