もう何度もいったことだが、天は二物を与えずなんでのはありゃあウソで、天は平気で二物も三物もひとりに与えるもんさ。与えずの謂いは、まあ一物もなかった者──ほとんどの者が僻まずに暮らせるようにっていう、慰めあいみたいなもんだな。だが、じゃあ二物三物のクチが恵まれているのかっていうと、これがそうでもないわけでね。持て余したり妬まれたりと、それはそれで大変なんだよ。むしろ一物もなかった方がよかったなんて思ってたりするわけさ。え? 俺か? 俺は半物をいっぱいもっている。大概のことは相応以上にこなせるんだが、どれひとつモノにならない。それはそれで困ったもんだぜ。