#3385

　苦難を重ねて得られる幸福なんてのは大したものじゃないよ。本当に幸福な瞬間は何の前触れもなく訪れて何よりも満ち足りている。もし幸福に苦難を求める者があるとしたら他者の幸福を遮りたい者だろうね。ただ幸福を幸福と客観的に認識するには比較の材料が必要ではあるし、いざ幸福を得た時に奇妙な罪悪感を覚えてそれを解消するために過去の苦難を用いる必要がある者はあるかもしれない。だが幸福そのものはそれらと切り離して考えるべきものだ。苦難と幸福は関係ないし個の幸福に難癖をつける権限をもつ者もいない。幸福はただ訪れるだけのものだ。そして何の前触れもなく去ってゆく。