生まれて一年に満たない赤子にも欲望はあるし、それを満たすための手管だってある。こども＝無欲で無垢、という認識は通用しない。ただ、抱く欲望の種類は無垢といえるのかもしれない。その欲望は、自身の生を生き物として真っ当に実現したい、という類のものだからだ。名誉欲とか物欲、金銭欲などではなく、ひたすらに生を繋ぎたい、愛情を受けたいという、いわば後づけの価値観に毒されていない欲望で赤子は満たされている。こどもが備える愛らしさとは、あるいはそういう剥き出しの欲望に対する憧憬か懐古のようなものに根ざすものなのかもしれない。
