かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#198

 毎年四月一日には『ハムレット』の有名な台詞を思い出す。“To be, or not to be: that is the question.”ってやつだ。名訳は「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」なのだろうが、明治期だか大正期だかにこんな風に訳したひとがあったらしい――「アリマス、アリマセン アレハナンデスカ」。ああ悩んでいるよ、ハムレットが激しく悩んでいるよ。ものすごーく混乱しちゃってるよ。多分ハムレットもう自分でも自分がなに考えてるんだかわかってないよ。ああ、ああ。
 で、なぜそれを四月一日に思い出すかというと、April Fools' Day を「四月ばか」と訳したひとがあって、そしてそれが日本ではすっかり定着しちゃっているからだ。皆さんご存知の通り、英単語 fool には「ばか」とか「愚行」という意味の他に、「騙す」「たぶらかす」という意味がある。その両者が揃ってこその April Fools' Day、ウソと狂騒の祝祭になるわけだが、「四月ばか」と訳してしまうと、片方がなくなってしまう。間違いとはいいきれないが、中途半端ではある。ハムレットのめい訳も、間違いとはいいきれないが(てゆうかある意味ものすごく核心を捉えている気がしないでもないが)正しいものとも考えられない。そこんとこがちょっと似てるんだな。それで毎年四月一日になると、飽きもせずこの連想が湧き起こってくるというわけ。
 で皆さん、しっかりウソはつきましたか? オレは全然つきませんでした。まあオレは普段からあることないこと言い散らかしているからねえ。四月一日ぐらいはむしろおとなしくしといた方がいい気がするよ。うん。