かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#44

 ものごとを論じる時、特に複数のものを比較して論じる時には、入念な準備が必要だ。なぜなら、形而上的なものであれ形而下的なものであれ、それら複数のものが複数として存在するということ、比較が可能であろうと思われることは、即ちそれらが異なるものであることを意味している。異なるものである以上、それらは根本的に「交わっていない」。そして交わっていないものを並べて論じることは、そもそも無理なのだ。なのに並べて論じようというなら、条件づけを厳格に、明確に、平易におこなう必要がある。つまり、それら複数のものの、なにについて、どういう状況で、どのように比較し論じるかという定義づけだ。そしてそれはしばしば、論じること自体の無意味を定義づけることになる。それでもなお論じたい時、論者は、その論が対象によって成立するものではなく、論者自身の事情で成立するものであることを自覚しなければならない。それを自覚しない論者は論者として成立しないし、そこからあらわれる論もまた当然、成立しない。論とはそもそも、そういうものだ。