かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#295

 喫煙はまぎれもなく悪習のひとつだ。なぜならそれは、無数のひとびとに寛ぎの時間を与え、救済をもたらしてきたからだ。嫌煙運動はゆえに、敬するに値するものである。人間は自ら築いた文明の恩恵と引き換えに、相応の苦しみを甘受しなければならない存在だ。そんな人間に救いのひとときなど、与えるべきではない。文明の恩恵を受けながら同時に文化の救済も得ようなど、過剰な贅沢以外のなにものでもない。嫌煙家の人々はそれを熟知した上で、自身も文化を拒みつつ愛煙家の贅沢を戒める、実に敬うべき人々なのである。