かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#128

 ニッチ(niche)とはそもそも壁龕(へきがん)、つまり装飾品などを安置するため壁に設えられた窪みのことだという。さて現代の日本は分衆化が進みに進んだ結果、ニッチ産業、即ち多くの顧客は期待できないものの確実に需要があったり、あるだろうと予測される市場を標的とした小規模産業の花盛りとなった。ニッチ産業ということば自体は、壁龕としてのニッチから派生した生物学用語としてのニッチ(生態的地位)から生じたとされているようだが、もうひとつ戻ってそもそものニッチとして考えてみると、その具体的なビジュアルはやたらおもしろい。ニッチ花盛りということは、壁中アナだらけということになるのだ。広い壁面がなくずらっと窪みが設えられた壁、なんだか気持ちが悪くなってくる光景だ。それが現代日本の市場の在り方らしいと考えると、その市場の背景となる文化のよじれ具合が実に象徴的に顕れたもののように思えないか。