#225
こんな齢にもなつて大変に恥づべきことと覚ゆるのですが、私(わたくし)加糖練乳が好きなので御座います。それはもう大好きなので御座います。巷で売られている百五拾瓦入チウブなど一気に啜れてしまふのです。そう、チウブの口に吸いついて、乳呑み子が母親の乳汁を吸うが如くにあのどろりとした甘味を啜り込んでしまふのです。嗚呼なんと恥づべきことでありませう、こんな齢にもなつてあんなものを好いて居ろうとは。けれど好きなのです、大好きなのです。どんなに小難しいことを述べ立てて居ても、人生がどうのと呟いてみても、同じ口であの忌まわしいこどもの食べ物を啜る自分が居るのだと思う時、私は正味自分自身にどうしやうもない怨嗟と嫌悪の念を抱いてしまふのです。