かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#237

 最近、一歳二か月になる子が、身の丈の半分近い段差を降りる技術を会得した。降りる側に尻を向け、爪先からそーっと下へ降ろす、というワザだ。進むべき方向に尻を向けるという逆転の発想を、教わるのではなく自ら発見したのだ。すごいと思う。人間という生物が学問をなし得た理由がちょっとわかる気がした。だがそれよりも感動したのは、オレが目の前にいる時にはそんなワザを弄さず、オレに全幅の信頼を寄せて正面から踏み出してくることだ。こいつは絶対に裏切れない、そう思いながら体重10kgの突進を受け止める時、脳の底からなんかじわっと染み出す気がする。それは間違いなく未来への活力になる物質だ。人間が文明をなし得ても未だ滅びていない理由が、ちょっとわかる気がする瞬間だ。