#1143
賢者とは、ひとつの事案につき必ずふた通り以上の可能性を見出し、状況に応じて最も相応しい方法を選び、それが思わしくなかった時には躊躇せず代替案へ移行することのできる者のことである。時として賢者は変節漢の誹りを受けることもあるが、それは賢者の見据える目的地が周囲の凡愚には見えていないだけのことであって、目的地がずれなければそれは変節ではない。一方愚者とは、ひとつの事案につきひと通り以下の可能性しか見出せず、従って状況に応じて策を選択することができず、それが思わしくなかった時に立ち止まることすらできない者のことである。時として愚者は一徹の称賛を受けることもあるが、それは選んで一徹をおこなっているのではなく、それしか見えないからおこなっているのであるから、本義的には一徹と呼ぶに足らない行為である。