かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#145

 教育はあんまりフレンドリーであってはならないと思うんだよね。基礎的な学問は必ずしも当人の学究意欲に添うものではないし、社会との折り合いをつけるための要素の学習は生き物に対して根本的に理不尽なものであって、それらの中には“馴染む”ことよりも“体得する”に近い習得をした方がいいものがある。フレンドリーな教育では、それらはしばしば体得に至らない知識としてしか会得できない。たとえば「他者の痛みがアタマではわかるが自身のものになぞらえて感得することはできない」状態にしかたどり着けない場合も少なくないわけよ。その辺をクリアするためには、教育者ってものが、被教育者に、ある程度の畏怖や敬意を以て対される存在にならなくちゃいけないんだな。というより教育者は、被教育者に侮られ得る存在になってはならないんだ。なぜなら侮られた者が述べることは、どんなに重要で正当なことであっても述者同様に侮られてしまうからだ。必要悪といわれようがなんだろうが、教育者と被教育者の間には一線が必要なのさ。もちろんそれは、体罰をよしとするという話ではない。体罰の有無にかかわらず、敬意は存在し得るんだからね。まあ傑出した教育者がいれば話は別なんだが、そういう存在を遍く社会に行き渡らせるなんて、どう考えたって無理だろ?