かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#298

 どんな創造物も――実用品であれ趣味の品であれ、形而上的なものであれ形而下的なものであれ――実作に入る前はすべて傑作だ。しかしそれが創造者の手を経て他者にわかるかたちをなしたあとには、ほとんどが傑作ではなくなってしまう。それを傑作たらしめるのは創造者の技術であり、その技術を才能と呼ぶ。もし考えた通りに仕上がったのに傑作にならなかったとしたら、それは才能が欠如しているというよりは、知識が不足しているのだ。即ちそれが創造するに足るものか至らざるものかの判断をくだすための情報が足りていないのである。