かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#334

「タダより高価いもんはない、いいますやろ」「いいますなあ」「でもインフレちゅうもんが進んだら、それよか高価いもんが出てきとるん違いますやろか」「んなアホな。そもそもタダより高価いちゅうのはたとえ話で、要はひとさまの世話になるとあとでよほど手間かかる、ちう意味であって」「そやから、ひとさまの世話になってタダ、より面倒なもんがインフレで出よるんやないかと」「たとえばどないや」「タダよりすごいんやから、もうお金もろてまう」「なるほど、闇金とかのことか」「いやあれは金を金で買うとりますから、タダやおまへんな」「ほたら、なんや」「たとえばやね、会社行って働きますな。で金もろてくる」「そらおまえ、普通の労働や」「でもお金もろて、それに見合う分だけ仕事しとったら、『もっと働け』言われまんがな」「まあそうやな」「なのに働かなかったら、干されます」「クビになるちうこったな」「クビは厭やから、もらえるお金よか働きます」「そやな」「高価いでんな」「高価いな」「タダでもろとる方が、よほどマシや思いますやろ」「だんだんなにが言いたいかわかってきたで」「でもよう言わへんね」「言わへんな」「つまり、そういう世の中になってきよった、言いたいねん」「暗い話やな」「暗い話です」