かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

【ボクとアイツと世界の限界】あとがきとか。

 そんなわけで三作分終了。
 改めて読み直してみて、まあそんなに激しく悪いわけじゃないけど、敢えてこだわるほどいいわけでもないと再確認。ギリギリのレベルは保っているにしても、それだけっていうか。
 着想も決して新鮮じゃないしねえ。

 実は本人、それなりにやる気はあったんだよね。当時は。
 もちろん当時から“こりゃ決して佳作ってもんじゃねえな”とは思っていたけれど、そこはほら、数撃ちゃなんとかというか。少なくとも読めないレベルってわけじゃない(と思う)から、ある程度まとまればどうにかなるんじゃないかな、とか。そういうヌルい希望をもっていたわけですよ。
 それで、アイディアメモは作ってたのな。
 基本になるのは、最終作『インフルエンス』。
 アイテムの正体がなんだかわかんないでしょ。そういうものなんだ、っていう強引な話だけで。その強引さを、さらに無理やりに着地させようと考えてたんだね。
 一応の目論見としては、同様のアイテムを複数準備してひとつずつに物語をつくり、最後にそれをまとめる――みたいな感じ。

 当時のメモを見てみると、こんなことが書かれている。

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1)増幅装置(欲望の)(善意の)(感謝の)(愛情の)
2)選択フィルター(↑)
3)クトゥルフ的なもの、化け物 インスマウス 喰われる者の実感、変質の恐怖
4)吸血鬼になってしまう 制御できない衝動
5)電卓予言機→寿命の
6)チャットの座敷童子
7)矯正施設 →なにかプラスになるもの →実は主人公の妄想 →でも真実
 ↓
 施設というもの自体が妄想(自室に勝手にこもっているだけ)→St.ジョージ園
 能力は実はある(呼び出してしまう)→ドラゴン(仮称)
「アイツ」も妄想上の存在→同室の友人
 〇脱走計画

増幅装置;
☆リモート・コントロール
i)エアコンのリモコンみたいなモノ「魔法使い」からもらう
 ボリュームあげすぎて殺戮へ(なんでも増幅)
 チャンネル切替機. 感情の向きをランダムに切替
ii)愛情が怒りに、哀しみが喜びに、楽しみが苦痛に
 感情を殺さねばならない者が感情に振り回され大事に
iii)オン・オフスイッチ いきなり感情がゼロ(見た目にわからない)
 使いまくってロボットの街に でも街の機能は不変

異星人・異次元人の実験
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 まあよくわからんでしょうが。実は久々に見てみたら自分でもよくわかんなかったw
 えーとね、とにかく、いろんなアイテムを街にバラ撒くってのがひとつのアイディアだったわけ。『インフルエンス』の理性破壊器みたいな。上のメモの 1)、2)、5)とかがそういうものだよね。i)〜 iii)はその方向性の模索。
 ひとつのアイテムにはひとつの能力があって、それをいじくってるうちにいろいろ事件になるという感じ。『インフルエンス』みたいにわかっていて使うという話もいいし、わからないでいじくって大事になるのもアリ。そういう話を、「ボク」と「アイツ」の掛け合いで進めてゆくつもりだった。
 もちろん「ボク」と「アイツ」は毎回違う。だから全体としてはオムニバス的なものになる。

 で、それのまとめ手段として、ふたつの案をもっていた。
 ひとつが、その話のすべてがひとりのひっきーの妄想だったっていう話。
 これは普通の夢オチ的な方向と、妄想が物質化してお話自体は実際に起きていた、という二案に分岐する。どっちにするかは体力次第ってとこか。実際に起きていた、っていう展開にする方が体力を消耗する。

 もうひとつの案が、異星人がどーとかいう一行。異なる文明の誰かがイタズラ心で投じたアイテムが事件を引き起こしていたとか、遠大な計画のため人間を実験台にしていたとかいう感じ。
 前者、イタズラ心云々のイメージの根底には、奥浩哉の『缶』がある。天界の缶が人間界に落っこちて、それ踏んだらアンデッドになってしまうという話……だったと思う。つか、それがホントに『缶』だったかどうか記憶があやしいんだが。
 とにかく、「ある世界ではなんの変哲もない物が、人間の世界にきたらものすごいアイテムになっちゃった」ということ。それが理性破壊器だったり感情リモコンだったりするわけだ。その事件を一度見た“ある世界”のイタズラ者が、こいつぁおもしれえや、といろんなモノを落っことす話にしよう、という。
 後者は“神”的ななにかが、人間を次の段階にするための方法をいろいろ探って実験していた、っていう感じ。神といっても、ようするに人間以上ってことで、別にホントにカミサマを出そうってつもりじゃないんだけどね。まあアレよ、『幼年期の終わり』です。あれのバリエーションとしてね。あるいは明確な意志のあるモノリス2001年宇宙の旅。いろいろやってみて「うーん、どうもまだダメだねえ。もうしばらく発酵させてみようか」っつって終わるw

 いずれにせよ、その前後からかなり私生活が忙しくなったっぽくて、一連のアイディアは結局そのまま放置される。もちろん、きっかけになったウェブ小説云々が没ったのもあるんだけど、わりとオムニバスならオムニバスなりにひとりででもまとめてみようっていう気はあったんだよね。
 ところが当時のノートを見ると、隣のページにいきなり結婚披露宴の席次案が書かれてたりする。懸賞小説に向けた長編のプロットも書かれていたりする。それなりに忙しくなって、この一連はそのまま忘れられちゃったってわけです……ん。なんだこの「最後の木の実」ってのは。ほう。なるほどなるほど。ああ思い出したぞ、当時は“手に余る”とか思って投げたんだこのアイディアは。今ならできるかな、微妙に時間は余ってるしな。ちょっといじってみようか。ふむふむ……。

 とりあえず【ボクとアイツと世界の限界】はそんな感じで。
 さて明日からは……なにをしようか。結局、意見は全然集まらなかったんだよねえ。俺って人気というか人望というか、全然ないみたいね。ま、いっか。その方が気楽といえば気楽だ。