かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

『魔』シリーズあれこれ【3】(結)

▲『魔少女・由衣』イラスト用キャラクター設定シート。おっさんども。
 森沢は横道設定(単車好き)のライダー姿。スーツ姿の決定稿があったはずだが行方不明。
 一方、中屋敷おやっさんは決定稿ではもっとむさ苦しかった。これも消滅。

(承前)

 それは、エロ系のマニア雑誌で、お尻が好きなおとな向けの本だった。
 その媒体で、お尻が好きなおとなに読んでもらう小説を書かないか、って誘われたわけだ。
 そこで、美弥さんを主人公にしたシリーズのアイディアをお話ししたら、「じゃあそれいきましょう」ってことになってくれて、で、二話分を書いた。
 タイトルはその編集者氏がつけてくれた。すごいタイトルで、自分じゃこれはできないな、と思った。感心した。

 これも六話ぐらいやるつもりで、大雑把なプロットは作ったんだよね。もちろん担当編集者氏(由衣ちゃんの時とはまったく別)の了解もとってあった。
 でも世の中うまくはゆかないもので、肝心の雑誌そのものが終わってしまった。
 なんか俺の関係する媒体って、そういう話ばっかりだねえ……。
 疫病神にでも取り憑かれてんのかね俺は。
 ハッ。もしかして俺自身が疫病神!?(←気づくのが遅い)

 読んでおわかりの通り、美弥さんの話は時代がひょいっと飛んでます。
 最初の真琴くんの話は、由衣ちゃんの時代と同じ“現代”。
 第二話は、戦国時代が始まるちょっと前。(っつっても数十年単位の“ちょっと”だが)
 第三話は明治時代になる予定で、そのための資料収集やディティール調整も進んでた。でも雑誌が終わっちゃって永遠の中断。(それは終わりというんジャマイカ?)
 予定では第四話が鎌倉時代初期で、第五話が昭和二十一年で、第六話が平安で、その第六話のラストから一気に第一話(真琴くんのやつ)のラストに戻り、そこから由衣ちゃんに話が繋がる……って構築だったんだよね。いやマジです。ホントに。
 ついでにいえば、第六話は美弥さん誕生のエピソードで、そこから最も新しい時制へ跳ぶ、ってのがミソといえばミソ。彼女の何百年を物語上で一瞬にしてしまい、彼女の時間の流れの感覚をなんとなくでも伝えたかったんだな。
 で、真琴くんの件を解決したあと自宅へ戻る道すがら、美弥さんが予感を感じる……ってのがラストシーンになるはずだった。その予感に基づいて美弥さんは猥雑街で“波長探し”を始めることになり、そして由衣ちゃんと出会う。

 ここまで緻密(かなぁ?w)にプロット組んでおいて、でも媒体が倒れたんでアウトってのもどうかとは思うんだが。
 とにもかくにも自分で書き上げちゃって、持ち込みなりなんなりすればいーじゃん、という。
 でも、信じられないことだが、当時は俺けっこう忙しかったのよ。
 月刊誌とかの細切れ記事いっぱいで。いやホントに。当時はまだデータ入稿が主流じゃない時代で、ワープロで原稿を作成しても、それを刷り出して出版社へ納めるのが基本だった。だから毎月鬼のように紙を消費してた。確か当時って、月にB5の感熱紙を5百枚ばかり使い潰してたんだよね。すげえ話だ、今からじゃ想像もつかない。
 そういう日常に晒されて、さらに別に自分個人の原稿も……って、それはさすがに無理。毎日どこかしらの締切を抱えてたんだから。ひとつの作業をしてる間に別の仕事を受注して、作業終了&納品と同時に次の分を始めて、その作業中に複数の受注があって……みたいな生活。まったく仕事を抱えてないっていう状態が、二か月に一度あったかどうかという頃。
 当時はねえ、だから新車も買えたしねえ(未だにそれに乗ってるが)。いろいろ遊んだりもしたねえ。貯金までしてたんだからすごいよな。もっともその貯金は、結婚とか結婚生活とかで使い果たしてしまって、今は一円たりとも残っちゃいないんだが。

 こうして考えてみると、『魔』シリーズって、俺が一番書き慣れていた頃に書いたものなんだね。今改めて読んでみて、なにかが違うと自分でも感じてたんだけど、要するに“練っていない”っていうのかな、文章を。
 こなれてはいるんだ。すらすら書いてる。でも、ことばを吟味するとか、文章を整えるとか、そういう時間や手間がかけられていない。まあ、だからリズミックだったり、流れがよかったりもする部分もあるんだけど。
 でもあんまり自分らしくないな、って気はする。じゃあどんなのが自分らしいんだ、っていわれると、ちょっと困るけどね。一番自分らしいと思えるものは、まだ表沙汰にはしていないもんだから。これからもならないかもしれないな、あれは。

 さて明日からはなにをしよう?
 これでホントにストックは尽きたんだ。なにしろ雑誌に出た分まで出しちゃったんだもんな。版元から文句言われても仕方ないことだよ。まあバレっこないけどw
 おまけにそのこぼれ話みたいなもので三日ももたせるなんて、詐欺みたいだ。
 それにつけても明日からどうしよう。
 またアレかな、今日のなんとかシリーズに立ち戻るかな。
 ふぅ。