アコギのネック調整
寝室に置いているアコギ(モーリスW40)を久々にチューニングしてみたら、季節のせいかネックが順反りとなった。
でトラスロッドで調整したら、ありゃりゃ。締める方向へ回しきって、修正できませーん。
さあどうしよう!?……と慌てたかというと、慌てない。
去年の夏、同様の症状が出た国産エレキギターに、ちょっと乱暴な“治療”をしていた。
どうするかというと、トラスロッドとロッドナットの間に厚いワッシャーを挟む、という方法だ。こうすれば理屈の上ではトラスロッドのネジ部が伸びたのと同じことになるから、もう少し締め込むことができるようになる。
もちろん、その目的にぴったり合うワッシャーが、そこらで売られているわけではない。
だから自作した。
ホームセンターで2mm厚の鉄製金折を買ってきて穴を開け周囲を削る。仕上がったら酸性の薬品を使ってサビどめの皮膜処理をする。事実上のコスト、一枚20円程度(ただし自分の作業費は考えない)。
その時、どうせ作るならと二枚作っておいた。
直径8.80mm、穴径5.95mm、厚み1.90mm(実測値)。
一枚をエレキの方に使ったから、もう一枚が残っている。
これをモーリスにも使った。
およそ2mmもネジ部が“延長”されれば、まあ俺が生きている間のトラスロッド調整には足りるだろう。
本当なら一旦指板を剥がしトラスロッドの埋め込み直しをするのがいいのだろうが、定価で四万円しかも実はもらいものというギターにそんな大工事をするのもなんだか違う気がする。それに、相手はアコギだ。そんな大工事をしても、そう遠からぬうちにトップの膨らみが出たりして、楽器としての寿命を迎えてしまうだろう。これで充分だ。
その後張力調整をゼロからやり直し、今はようやく落ち着いたところ。
その状態で弾いて、音の張りの違いを実感する。
全体に緊張感のある音となり、また高域の倍音が増えた感じで、いわゆる鈴鳴りに近い音が混ざる。
このクラスだと多分実際の製作は寺田製作所かと思うのだが、寺田のギターは鈴鳴りよりは中低域の図太さが身上だと個人的には思っている。そこに鈴鳴りっぽい音が加わるわけだから、これは弾いていて実に楽しい。
このギターに限ったことではなく、エレキでもなんでもネックに適度な張力がかかり、弦の張力といいバランスが取れている時、ギターは初めて本来の音で鳴るもののように感じる。
逆反りになっていたらそもそも弾けないが、順反り状態ではどうも音のキャラクターがぼんやりしてしまう。ギリギリのテンションがかかっている時が、そのギターの一番いい状態なのだ。
だが、店頭に並んでいる量産ものの新品がそういう状態だったことは一度もない。たいがいは順反りになっている。だから、世の中に出回っているほとんどのギターは、本来の音では鳴っていないはずだ。
わりと馴染みの店なら、言えばその場でトラスロッドを締めてくれる。だが、ふつうはそんなことはそもそも頼まないだろう。
結果的に、世の中のほとんどのギターはそのまま、つまりベストではない状態のままということになる。
これはいかにももったいないと思うんだよねえ。
トラスロッド調整は素人にもできる。いきなりぐるぐる回したらだめだが、ほんの少し、多くても30度程度の回転角で少しずつ調整してゆけば、必ずジャストなポイントに辿りつくことができる。
もちろんその都度チューニングをやり直し、最終的にはオクターブ調整なども(できるものは)しなければならない。これがフローティング状態のビブラートユニットを積んだギターなら、なおさら調整は面倒だ。(一応、裏ワザ的な簡単調整法もあるんだけどね)
けれど、それをするだけの結果を、真っ直ぐなネックはもたらしてくれる。
自分のギターの音に納得がゆかないひとは、ネックの状態を確かめてみるといいんじゃないかと思う。自分で調整するのが恐ければ、楽器屋へ持ち込めばいい。
それでワンランク上の楽器になったかと思うぐらいの結果が出るんだから、やってみて損はないと思うよ。
ただし、必ず自己責任でね。