かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

#1768

 誰かの心を傷つけることは、実はさして悪いことではない。心が傷つくのは、心のよほど深いところへの不用意な手出しがあった時だが、どこに手出しをされると傷つくかは当人以外にはわからない。当人にすらわからない場合もある。それは余人が簡単に想像できる類のものではない。つまり心への傷害は、よほど不作法な人間が不作法にふるまわない限りむしろ難しいことであって、そのほとんどが不慮の事故なのである。悪い点が生じるとするなら、それは傷つけたことではなく、傷つけたあとの対応に瑕疵がある場合だろう。もっとも、そもそもに「傷つけてやりたい」という故意があった場合には、傷ついたか否かの結果によらず悪い。