かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

【いいわけ的あとがきと次回予告のこと。】

 えー、そんなわけで、およそ半月に渡ってアップし続けた『witness』ですが。
 どうよ、この尻切れトンボ具合。
 オレはあきれましたよ自分で自分に。

 ホントだったら、最終回直前分(『#4 僕のこと。』-07)のあとが肝心なんだよ。そこまで延々と設定説明してんだよ。美春とマサフミがこれからどうなるのか、力を意識して使い始めたらどんなことになるのか、その力が無制限に開かれちゃったらどうなのよ……という。
 一応その辺は考えてはいて、だから最終回分に現代史的イベントがいくつか並んだとこがあるでしょ? その中には「ものすごく多数が、もしくはごく悲劇的に、ひとがまとまって死んだ事件」ってのが半分くらい含まれてるわけだ。その時マサフミがどうなったかを書くつもりで、当時はまだ紙のものが主体だった資料から事件を抜粋しておいたんだな。
 でも不発でした。ものの見事に。
 つか、それ全部をこの文体とこのペースで書いてったらいったい何枚分になるんだよ? という自問自答があったんですな。これは最初にも述べた通り投稿を狙って書き始めたものなんだけれど、全部を書いたら要項に指定された枚数を越えることは思いっきり明らかだし、そもそもそれだけ書き続けてたら到底締切には間に合わないわけで、もうどうしようもない企画倒れだ。
 オレは昔っからそうなんだよなあ。自分で自分の書くものの最終的な分量をきちんと量ることができないんだ。書き始めてから「うわー枚数たんねえー」って頭を掻きむしるばかり。構成能力ないのよ。

 そんなこんなで、あきらめて無理やりに閉じたのが最終回分。
 だからホント、そこだけ取ってつけたような具合になってて、それがまた中二感をいやが上にも増幅しているねえ。いやまったく、困ったもんだねえ。
 ただ自分では収穫だと思ったのは「ああオレこーいう文体でもいけるかな」という気がしたこと。基本的に文体が重い方なんで、さくさくっと読める一人称文体にはちょっとした憧れがあったんだな。知人にこういうの書くのがうまいひとがいてね。彼の作品をいつも「いいなあこういうの書けて」って思って読んでたのよね。
 でもこれを書いたことで、自分にもまったく無理ってわけじゃないぞ、っていう気分になれた。これは収穫でしたな。


 さて、次もあるぞ。次はもっと長いぞ。
『リンゴー・ザ・ワイト in the HEARTBEAT CITY』という。
 なんか見るからにラノベっぽいタイトルだが、あんまりラノベじゃないと思う。
 これは確か十年以上前、『witness』よりも前に書いたもので、自分ではすごく気に入っている。
 何度か手を加えるうちに、なんだか妙にくどく引きずるいやらしい重さがへばりついちゃったが、それも含めてオレ個人の好みではある。
 これはね、ある種の気晴らしでね。投稿を狙うとか、版元に売り込みに行くとか、そういうこと全然考えないで書き始めて書き上げたのね。(結果的に一社にだけ持ち込んだけど相手にはされませんでした)

 直前まで(といっても間に一年ぐらいあるんだけど、おとなの一年は短いんだ)、すごく重くて暗い暗ぁい話を書いてた。これはもともと単行本化を大前提とした作品で、版元側にも準備が万端整っていたのだけれど、脱稿したあといろいろトラブルがあってね。まあ脱稿までにも、予定の締切を一年半過ぎてたっていうトラブルがあったわけだがw、脱稿後もイラストレーターの逃亡があったりあとを継ぐひとがいなかったり、そうこうしているうちに肝心の担当編集部が消滅し原稿が宙に浮いてしまったりと、まあそんなトラブルがあって、未だ日の目を見ていない。四百字詰めで七百枚分ぐらいある。誰か本にしてください。きっと売れますよ。
 で、そんな重くて暗くて長い話と二年以上に渡って向き合ってきて、もう気持ちがめちゃくちゃ沈んでたらしいんだな。それである日、思い立ったのね。
「なにも考えずに、なにも考えてなさそうな話を書こう! 書きたい!」
 ってね。

 で、とにかく思いついた場面がひとつあって、それは致命傷を受けた人間がむっくり起き上がって「馬鹿野郎、死んだらどーするつもりだ」とか言うという。いや普通死ぬからそれ、みたいな。そんな馬鹿馬鹿しい話を書こう、と。
 それで、その辺まではホントに一気に、それこそ二晩かそこらで書き上げちゃった。
 でもそれじゃあ(文字通り)お話にならないし、それで放置するのはなんだか気が済まないからってんで、あとをどんどん続けていった。(それに合わせて、一気に書き上げたとこにちょこまかと伏線みたいなのがあとづけで織り込まれ、分量は五割増ぐらいになる)
 そんなわけで結局、全体としてはあんまり馬鹿馬鹿しくはならなかったけどね。
 でも気に入ってる。

 BGMには The Cars がお勧め。
 知らなかったら買え。ベストアルバム一枚で充分こと足りる。