かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

魔女・美弥 闇狩り【#2 魔法師淫祭祀】-04

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(承前)

 娘は喜んでいない。どうやら生娘であるらしい。
 突然のことに呆然としている間に襲いかかられたらしく、涙を流しながらまだ抗っていた。だが若者たちの力は強く、落花は今しも訪れようという様子だった。
「見つけた。まずはあの娘から戴くか」
 男は呟くなり、ぎりりと娘を睨んだ。
 と、それまで暴れていた娘の動きが、突然に止んだ。宙空を睨み、口をぱくぱくと動かすが、声は出てこない。全身が強張り、棒を入れられたようになった。
 若者たちは得たりとばかりに、娘を押さえつけた。
 ついに凌辱が始まった。
 いつの間にか娘の顔には、だらしない笑みが浮かんでいた。それは確かに、たとえようもない肉の快楽に溺れる者の表情だった。だが娘は、凌辱に反応しているのではないらしい。その笑みは若者の律動とは無関係にただだらだらと、かつ熟練の女でもここまではと思えるほど濃く滲み出ている。
 一方男は、娘を睨み続けていた。睨みながら喉をひくひくと震わせている。それはまるで、なにかを嚥下しているかのような震えだった。
 やがて喉の震えが止み、男は呟いた。
「ふむ……さほどでもなかったな。もう少し待った方がよかったか」
 娘を犯していた若者たちの間から、わあ、と悲鳴があがった。
 娘は失禁していた。失禁しながら全身をがくがくと痙攣させていた。
 その痙攣がおさまった時、若者たちのひとりが叫んだ。
「し、死んだ……死んじまった。違う、おれじゃねえっ。おれのせいじゃあねえっ」
 若者たちは娘を放って逃げ出そうとした。
「それは、ちとまずい」
 男がまたつぶやき、若者たちを睨む。
 彼らの全員がその場で硬直し、がくがくと震えたあとで、倒れた。誰もが一様に失禁し、中には勃起させた逸物から白濁液を噴水のように撃ちあげている者もいた。そしてその顔には、みな似たような惚けた笑みが貼りついていた。
「不味い……」
 男は呟き、また周囲を見廻した。
 と、その視線が、先ほどとは違った調子で、動きを止めた。
 男の視界に捉えられたのは、ひとりの女。
 この状況にあってただひとり、旅装束とも見える衣を着たまま、真っ直ぐに男を見据えている。
 不思議なことに、周囲の男女の誰にも、彼女がそこにいることがわからないようだ。
 長い黒髪の半ばほどを紐で括っている。
 切れ長の目には、男への明らかな敵意があった。
『何者だ、おぬし』
 男は口を動かさずに呟いた。それは声でない声となって、黒髪の女に届いた。
『美弥。多分、あんたと同じ力をもってる』
 女もまた、表情ひとつ変えずに語り返した。気のせいか、風もないのに髪がざわりと揺れたようだった。
『ほほう、では同族ということか。久しいな。同族と出会うのは何年、いや何十年ぶりのことか。ならばどうだ、おぬしもここにいる連中の魂を喰らうか。構わんぞ、幾ら喰っても。思っていたよりよほど多くの者どもが集まってくれたからな』
 男がにやりと笑う。だが美弥は、いっそう目つきを険しくして答えた。
『一緒になんぞしないでおくれ。あたしは喰いたかぁない。ひとの魂は断じて喰わない』
『ふむ。ということは、どうやら同族ということではなさそうだ』
『多分ね。つまりあんたは、心の底から鬼になりきったってことなんだろう』
『そしておぬしは、心は人のままでからだだけが鬼になった……か。たまにいるのだ、そういう天邪鬼が』
『天邪鬼……そうかもしれないね。もっともあたしは、自分がなんだっていいのさ。本当は、あんたがなにをしようが構わないと思ってるぐらいなんだから』
『ではなぜ、此処へ来た』
『御仏の名を騙ったね、あんた』
『それがどうかしたか』
『あたしはそれが、気に入らなかったんだ』
 男の顔におどけたような笑みが浮かんだ。
『なんだ。おぬしは鬼のくせに、仏なんぞに帰依しているとでもいうのか』
『いや、そうじゃない。あたしは仏を信じない。信じる相手は、ひとだけさ』
『信じる? 人を? 自分の都合しか考えず、獣の一族に過ぎぬくせに獣を見下している、愚かな連中のことを、か? そもそも仏を利用するなど、奴ら人が始めたことではないか。大昔から奴らがやってきたことだぞ、おぬしが知らぬはずはあるまい』
 美弥はただ男を睨み続けている。
『奴らはな、せいぜい我らの餌にしかならんものなのだ。奴らとはまったく成り立ちの違ういきもの……心、情、魂などと呼ばれているものを喰らい、肉という実体をもたずに永らえる我らの』
『誰でも信じるってわけじゃないよ。あたしが信じているのはひとりだけ。そしてそのひとは、本当に仏に仕えていた』
『なるほど。それで仏を騙った俺が憎い、というわけだ』
 男は突然口を開き、声に出して哄笑した。
『ならば我らは、どうやら不倶戴天の仲ということになりそうだな』
『そうだね』
『惜しいな。俺とおぬしが組めば……』
 言いながら男は、今も彼の逸物に性器を抉られ、歓喜に狂っている女の臀を叩いた。
『こんな色狂いだけが取り柄の畜生と組まずとも、毎度無駄なく、より豊かに腹が満たせるようになると思ったのだが』
 美弥はふふんと鼻で笑い、はっきりとした口調でいった。
『あんたらの仲間になるのは、金輪際お断りだよ。あたしの信じるあのひとのためにも』
『ならば、どうする』
『こうさ』
 美弥は手を伸ばし、男を指さした。
 その指先に、見えない波動が漲る。一瞬ののちに、凝縮された力が男目掛けて放たれた。
『おおっと』
 男は身を反らした。
 ために真っ直ぐ飛んだ美弥の力は、男には当たらなかった。しかし、男が身を反らせたゆえに引きずり上げられた女……今も性器を繋げたままの、あの女を直撃した。
 ぼおん。
 鈍く低い爆発音がした。
 美弥の力をくらった女のからだが、破裂したのだ。
 臍から上を失い、赤黒い肉と白い骨を腹の辺りに晒した女の残骸は、その断裁面からぴゅうぴゅうと血の柱を噴き上げながら、それでもなお男の腰に性器で繋ぎとめられていた。

(続く)