かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

〓井陽平誕生の経緯とか。

 俺の筆名(のひとつ)は「かどいようへい」という。みんな知ってるよねえ、だってこのブログの看板になってるもんねえ。
 漢字で書くと、こうなる。

 最初の「かど」の字が、漢和辞典には載っているがパソコンやワープロには存在しない。なぜだか知らないが、おかげでウェブで検索不可能な名になってしまった。まあ昔から写植の文字盤にもなくて、職人さんが一文字ずつ手作業で作ってたんだけどな。(当時はご迷惑をおかけしました――職人の皆さん)
 なぜそんな名を名乗ることにしたのか。
 実は姓名判断による。

 もう二十五年ばかりも前、まだ俺が編集屋だった頃のこと。
 とあるニューエイジ的(というより当時は二十年遅れのヒッピー残党または論理的オカルティストという認識だった)ライターさんの紹介で、姓名判断を受けることになったんだな。本名で。
 そしたら「名前にあと五画加わるとすごくいい」という話で。
 そこで、記名仕事にはそういう名を使うことにしたわけさ。
「カド井陽平」という名は、一文字めから12画・4画・12画・5画。本名は12・4・12。ちゃんと五画足したわけだ。
 じゃあなぜ、同じ12画で他の字を探さなかったのか。
 いや、探したんだけどね。この字が気に入ったのよ、この字が。

 なんかさ、ツクリの方。これがすごくかっきりした感じがしてね。
 意味も気に入ったんだ。手元の漢和辞典には、こうある。
「角材。四角な材木。かどだつ、きびしい。威光、神霊の威力」
 ね。かっきりしまくってるでしょ。
 俺はそういうものが好きなんだよ。だから迷宮も20×20の真四角が(ry

 ところが、だ。
 後日、同じひとにこの筆名での占いを頼んだら、
「なぜ五画を足したんです。おかげで天地割れの凶数に」
 とか言うのな。おい。なぜ。俺かっちり言われたこと守っただけなんだぞ。
 姓名判断って難しいんだねえ。もーよくわかんないや。
 よくわかんない上に、かど井の名前もその頃にはすっかり馴染んで、対外的にも定着しつつあったんだよね。だから、いいやこれで、と。
 いくつかの仕事を、写植職人さんを困らせつつ

 名義でやりました。はい。
 まさかその十年ばかりあとに、「ワープロで出ません」「パソコンで出ません」「だから検索できません」と言われるようになるとは思わなかったなあ。検索不能がわかっていたら、早々に変えたんだろうに。
 実際、書名『ウィザードリィの秘密』で検索をかけると、「この著者がアンソロでも出してるかと思って検索しようとしたらできなかった」っていう、ありがたくももったいない話が見つかったりするんだよねえ。本当にありがたい、ありがたいのに本当にもったいない。我ながら“やれやれ”といった気分になってしまうよ。(検索しようと思ってくださった方、本当にありがとうございます。感謝してます)
 俺さ、アンソロはやってないけど、実は雑誌に小説書いたりしてたんだよ。ちゃんとカド井陽平の名前で。『魔少女・由衣 闇狩り』っていう。もっともその雑誌は、一号こっきりで終わっちゃったんだけどね。『Neo Vision』っていうんだけど。
 その小説自体は長期連載&単行本化を狙ってたから(実際そういう話も編集部との間である程度進んでいた)、ストーリー自体はかなり先まで作ってあった。その辺がなんだか自分でもったいなくて、後日にちまちま一冊分ぐらいは書いたんだな。でも一冊分書いても物語全体の三分の一ぐらいなんだけどさ。いろいろ事情があって、その先は書いていない。多分これからも書くことはないんじゃないかな。だから未完。

 結局、今でも時々筆名として使っているが、その時は全部ひらがな表記にしている。「かどいようへい」の登場だ。もう命名の動機からは思いっきり離れてしまった。
 検索はしやすくなったが、もはや誰もかどいなんか知らない。手遅れもいいところ。
 一番最近では昨年の夏頃(某パソゲー雑誌9月号)に「かどいようへい」の名前が出たんだけどね。きっと誰も気づいていない。3D迷宮を歩いてモンスターを倒してアイテムを集めて……というゲームのレビューなんだけどね。進歩ないね俺は。まだその辺をうろうろしてんのかって感じだね。(でも多分一生こだわると思う)

 そんなわけで、かど井陽平なる名前の命名譚でありました。