かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』

ある文筆業者(分泌業者ではない)の生存証明。基本的に毎日更新。

ウルトラ・ベスト・バウト――『ウルトラマンネクサス』第35話

 ほんの気まぐれからまた『ウルトラマンネクサス』の一部を見ちゃって落涙滂沱。
 見たのは最終回『絆』とエピソード35『反乱 −リボルト−』の、それぞれバトルシーンを中心とした計20分程度なんだけどね。それだけで泣くね俺は。

 最終回はウルトラマンが連続して変身、最終形態ノアまで一気呵成に進む、その勢いが最高。登場いきなり和倉隊長を助ける辺りからもうぶんぶん飛ばしている。そして一大転換点となるこどもの声援から先は、もう爽快感しかない。途中に挟まるイメージショットも含め、高密度のコンセプチュアルワークがわずかなブレもなく結実している。
 そして『反乱』回のバトルシーン、これはもうウルトラシリーズ屈指の出来映え、ベストバウトといってしまってもいいんではないかという充実度。この完成度は、この先も追い抜けないんじゃあるまいか。
 なにがいいといって、この回、対メガフラシ&ガルベロス戦で、ウルトラマンネクサス/ジュネッスブルーと、防衛隊ナイトレイダーの連携が完成するのがいい。
 ネクサスのドラマは当初、ウルトラマンもまた排除すべき怪物の一体というスタンスから始まっている。それが紆余曲折の末、この回、最終回まであと二話というところでようやく絆を結ぶ。
 その結実がバトルシーンで明確に表現されている。
 それが『反乱』回のバトルシーンなのだ。ここで胸を熱くせずどこで熱くする。え。最終回の孤門のナギへの呼びかけ。う。ラス前の瑞生と憐。うう。熱い。それも熱いね。まいった。

 まあそれはそれとして、このバトルシーン、おそらく脚本より現場のモチベーションが高かったんじゃなかろうかと思う。
 ことにガルベロスとの闘いの山場ときたら。
 火球を吐き出しウルトラマンを排除しようとするガルベロスに突進するジュネッスブルー、その背後へ回り込むナイトレイダーの戦闘機ハイパーストライクチェスター。迫りくる火球を避けようとジュネッスブルーが身をかがめると、背後にいたハイパーストライクチェスターはいつの間にかストライクチェスター群四機に分離していて、文字通りに四散。勢いをつけて前転し火球を躱すジュネッスブルー、急上昇した戦闘機群は四方からガルベロスに牽制攻撃を仕掛け、ガルベロスの動きが鈍ったところへジュネッスブルーがとどめのシュトロームソードでガルベロスを一刀両断する。
 なんってカッコいいッッッ。
 ことに、分離/合体というウルトラシリーズ伝統の無駄機能(w)をフルに活かした操演特撮は、圧巻だ。

 そもそもに分離/合体機能が活きたシチュエーションというと、シリーズ内元祖ともいえるウルトラホーク1号(『ウルトラセブン』登場)が、第7話『宇宙囚人303』で見せた強制合体ぐらいしか思い浮かばない。あのシーンはなあぶつかりあう鉄の機体同士がまき散らす火花なんかも合成されていて、すげえ緊張感があったよなあ。それにしてもなぜキュラソ星の囚人303号はβ号だけで逃げたんだ? 1号、ハンガーで分離整備中だったのか?
 まあとにかく、飛び込み前転をするジュネッスブルーと吊り操演の戦闘機群が一画面に映し込まれたこの場面は必見といえる。

 吊り操演は難しいそうだ。
 自分でやったことはないが(まあふつうそうだよな)、想像はつく。
 これがライブアクターとの共演ともなれば、タイミングやスピードその他、課題は山盛り。だが、だからこそやり甲斐があるともいう。
『反乱』回のシーンも、ジュネッスブルーのアクションと操演スタッフの息がぴったり合っていなければ間延びして話にならなかっただろう。
 いったいどれだけのリハーサルを繰り返したのか、それとも劇中のジュネッスブルーとナイトレイダーのように“絆”が結ばれていてスムーズに撮れたのか。
 どうあれ、ひとの手が介在する“特撮”の技術の結実としても、この場面は極みのひとつだと思う。CGとは違う、職人の肉体的なスキルが生み出す不思議なリアリティ。
 俺はこの場面、現場が「こういうのを撮りたい、やってみたい」と推したシチュエーションだったんじゃなかろうかと思っている。それぐらいこの場面には、特撮屋の意地のようなものが感じられる。俺たちのワザを見ろ、という意気込み。
 しかもそれがドラマと完全にマッチしているんだから、文句のつけようもない。

 ネクサスは本編ドラマがあまりにも魅力的で、ウルトラマンとはいいつつも完全に人間、というよりは生きとし生けるものと“悪意”の拮抗を描いていて、ウルトラマンという存在自体が“道具”に過ぎない部分もある。
 バトルも然りで、それは怪獣対超人という別次元のアクションショーではなく、物語の必然から展開されるひとつの解決策としておこなわれる例が多い。従来のウルトラマンが、基本的には怪獣対超人のバトルがメインだったのとは、百八十度逆方向からのアプローチといっていい。
 だが、だからといってバトルが軽く扱われているかというと正反対で、むしろそういうポジションにあるバトルだからこそ重みも説得力も必要になるのだ。
 ネクサスのバトルシーンは、そういう魅力に満ちている。
 これを見ずして(そして関連映画『ULTRAMAN』を見ずして)ウルトラは語れない。
 そんなくだらないことばを連ねたくなるほど、その完成度は高い。

 ああもうホント俺ネクサス大好きだ。
 病膏肓にて抜け出す道なし。
 そんな自分の人生も俺、けっこう好きだ。


※関連ログ※
『ウルトラマンネクサス』を今さら考える−01 - かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』
『ウルトラマンネクサス』を今さら考える−02 - かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』
『ウルトラマンネクサス』を今さら考える−03 - かどいの『I'm in Rock!-Ⅱ』
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